第46回 日本マイクロサージャリー学会学術集会イブニングセミナーにて
11月28日に第46回 日本マイクロサージャリー学会学術集会が都内で開催されました。
イブニングセミナーに登壇した光嶋医師は、「マイクロ機器の最新進化:世界情勢と将来展望」をテーマに、これからの20年で微小外科の世界において予測される進化について講演。これまで開発してきた手技の歴史と新たな治療の可能性、手術を支える医療器具や装置の発展を語る中で、時折触れる形成外科医の「あるある話」に、会場では笑いが溢れる場面もありました。
●リンパ浮腫を外科的に治療する超微小外科
スーパーマイクロサージャリーは、直径1mm以下の血管や静脈を吻合する手術です。主に、乳がんや子宮がんの手術でリンパ節を取り除いた患者が発症する「リンパ浮腫」を外科的に軽減する手術として、近年、注目が集まります。医療技術の発展でがん治療が可能となり、術後の患者さんのQOL向上が求められているのです。
リンパ浮腫などのリンパ管疾患はがん治療を乗り越えた患者さんに限られたものではなく、新生児や小児も難治性リンパ管疾患を発症することがあります。生まれつき、肺の外側の胸腔内にリンパ液が漏れ出し胸水や腹水がたまる「新生児乳び胸腹水」や、生まれつき足が腫れる「先天性下肢リンパ浮腫」、12〜13歳の思春期を迎えた年頃に足がむくみ出す「原発性リンパ浮腫」などです。特に新生児のリンパ管は直径が0.1mmと極細であることが多く、吻合も困難を極めます。
こうした手術で使われる針や糸は超微小で、直径0.03mmの針は軽く息を吹きかけるだけで飛んでしまう綿ぼこりのような細さです。それよりもさらに細い糸は、肉眼では見えず、反射する光を頼りに扱わねばなりません。
小さな術野を拡大しながら手術をするため、光学顕微鏡下で行うのですが、実はこれが形成外科医の首に深刻な負担をかけているという現状にも触れました。
●顕微鏡下からヘッドアップサージャリーへ
最近、マイクロサージャリーを手がける形成外科医の職業病として深刻な問題になっているのが首の変形性関節症です。20年30年と、顕微鏡下で手術を続けているうちに首がつらくなる症状です。光嶋医師は、若い頃から武道に嗜みがあり体幹が鍛えられているため、「首は強い」と自負するものの、昨今のスーパーマイクロサージャリーの世界的な広がりを考えると、やはり解決すべき課題だと考えてきました。顕微鏡を覗かずして手術ができる技術があれば積極的に試す中、最近、目に留めているのが8K映像技術です。
術野を最大300倍に拡大して映し出すモニターを、頭を上げたままの姿勢で見ることができる手術支援装置です。スーパーマイクロサージャリーに新しいスタイルを提案すると同時に、何よりも執刀医の首を守るものとして期待されます。顕微鏡を覗かないので、視野が阻害されないことも、この装置の良さだそうです。
会場の活気に応え、時間の許す限り、様々なエピソードを話し、イブニングセミナーを後に次の会場へ向かいました。