光嶋勲の活動報告(学会編:2019年1月〜6月)

乳がんや子宮がん治療による副作用で発症するリンパ浮腫。放射線治療や、がん細胞のフィルターの役割をするリンパ節を切除することにより、リンパ液の流れが著しく滞ってしまい、腕や足がひどくむくんでしまう病気です。

これまでリンパ浮腫は対症療法として弾性ストッキングやマッサージなどの理学的アプローチがなされてきました。そこへ最近では、リンパ管と静脈を縫い合わせてつなぐ「リンパ管静脈吻合(じょうみゃくふんごう)」と言われる手術で、むくみそのものを軽減する方法が広がりつつあります。リンパ管静脈吻合の手術を受けた後、弾性ストッキングを着用することにより、むくみを軽減させようという方法です。

この手法を開発したのが光嶋勲です。超微小外科手術の最先端技術を何十年にもわたり開拓し続けてきました。

光嶋勲のもとへ手術を受けにくるのは、日本のみならず、サウジアラビアやロシア、欧米など様々な国からの患者さんです。この中には「少しでも症状を軽減したい」「悪化を防ぎたい」という悲痛な思いでネット検索をして英語の論文や日本語の記事を頼りに光嶋勲にたどりついたという患者さんも多くおられます。

患者さんが治療したいと願うように、その手術の技を学ぼうという超微小外科医も世界的に増えました。光嶋勲のもとに修練に訪れたり、光嶋勲を国際学会でのライブ手術に招聘したりと、リンパ管静脈吻合は世界に広がっているのです。

 

10月にロシアのトムスクで開催される「シベリアン・マイクロサージャリー・サミット」のHPより

 

光嶋勲が参加した学会

それでは、今年の前半、光嶋勲が参加した学会をいくつかまとめて紹介したいと思います。

米国マイクロサージャリー学会議(ASRM2019)

2月にカリフォルニア州パームデザートで開催された米国マイクロサージャリー学会議(ASRM2019)では、約500名もの聴衆に対し「スーパーマイクロからナノマイクロへ」というテーマで講演しました。8Kカメラを用いたナノマイクロサージャリーで、100ミクロンのリンパ管吻合をしている様子の動画を投影したところ、注目はその巧みな技で使われる医療機器に集まりました。

The 8th World Symposium for Lymphedema Surgery (WSLS2019)

4月に台湾のチャンガンメモリアルホスピタルで開催されたWSLS2019ではライブ手術を行いました。その様子が次の2枚の写真です。

 

ライブ手術の様子

各国から集まった微小外科医たちがライブ手術を見学する会場の様子

 

また、開催期間中の学会の様子は、フォトギャラリーからご覧いただけます。外科医たちが集まる学会の様子を垣間見ることができます。

その中から集合写真を1枚ピックアップしました。

 

出典:WSLS2019のフォトギャラリー

 

The 2nd Annual Meeting of Chinese Association of Microsurgeons

5月に大連で開催された中国の超微小外科医の学会では、中国全土から微小外科を専門とするドクター約2000人が集結。この学会より招聘を受けた光嶋勲は、キーノートで「スーパーマイクロからナノマイクロへ」という演題で講演をいたしました。

 

キーノートで「 スーパーマイクロからナノマイクロへ」をテーマに講演する様子

 

第10回世界マイクロサージャリー会議(WSRM2019)
The 10th Congress of World Society for Reconstructive Microsurgery

光嶋勲は世界マイクロサージャリー学会で理事長を務めてまいりました。6月にイタリアのボローニャで開催された第10回世界マイクロサージャリー会議では、光嶋勲が理事長講演で「Aesthetic reconstruction with supermicrosurgery(超微小外科手技を用いた美容再建術)」をテーマに取り上げたところ、新しいコンセプトの発表に、若い医師たちの注目を集めました。

 

光嶋勲が生み出したリンパ管静脈吻合という手術は、学会を通じて世界各国の超微小外科医に広まり、一人でも多くの患者さんの治療に繋がっていくことが期待されます。

そのためにも、肉眼では見えないほど微細に針と糸を扱えるピンセットなど、スーパーマイクロサージャリー、あるいは、ナノマイクロサージャリーに適した医療機器の開発も重要です。現在、光嶋勲は生涯現役の臨床医として、指導者として国内外を飛び回り、医療機器の開発者として国内のものづくり企業とともに試作を続ける日々を送ります。